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放射線滅菌 Sterilization/Disinfection

放射線滅菌(ガンマ線滅菌・電子線滅菌)と他の滅菌法との違いは何か?

単に微生物数を減らしたり、特定の微生物だけを除去することを殺菌といい、微生物数が生育できる可能性を限り無くゼロに近づけることを滅菌と言います。

滅菌法には、一般的な火炎滅菌法や乾熱滅菌法などがありますが、工業的に広く利用されているのは、高圧蒸気滅菌法、ガス滅菌法と放射線滅菌法です。紫外線は殺菌には便利ですが、滅菌には適しません。また、液体や気体の滅菌には特殊なフィルターを用いた濾過滅菌法が使われることがあります。

放射線滅菌(ガンマ線滅菌・電子線滅菌)の特徴

  1. 処理による温度の上昇が少ない
  2. 残留物がない
  3. 最終梱包状態での処理が可能
  4. 連続処理が可能
  5. 工程管理が容易
  6. 材料の放射線劣化の考慮が必要
  7. 照射完了後の後処理が無いため、直ぐに出荷が可能

なぜ放射線で滅菌できるか?

放射線が微生物の細胞に当たると、放射線が通り抜けた近傍の分子を励起や電離して、反応性の高い活性種を作ります。放射線はランダムに細胞に当たりますが、細胞の中で最も大きな分子は遺伝を司るDNA(デオキシリボ核酸)であるため、蛋白質や他の小さな分子よりも直接電離する確率が高くなります(直接効果)。さらに、細胞内の水が電離して生じた活性種もDNA分子と反応してDNAに傷を作ります(間接効果)。DNAに生じた傷が少なければ細胞は修復しますが、傷の数が多くなると修復しきれない傷が残るので、細胞は死んでしまいます。

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どんな放射線が滅菌に使われるか?

放射線であれば、どんな放射線でも殺菌作用がありますが、工業的な滅菌処理に使われる放射線は、一般に出力が大きなガンマ線と電子線です。

ガンマ線と電子線で殺菌作用に違いはあるか?

ガンマ線滅菌も電子線滅菌も作用においては違いがありません。ガンマ線は電波や光などの電磁波の一種ですが、そのエネルギーが原子に吸収され、原子から飛び出した2次電子が化学変化を起こさせるので、直接電子線で電子を当てたのと変わりがありません。

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滅菌の保証はどのようにするか?

医療機器等の放射線滅菌では、厚生労働省で制定されている「滅菌バリデーション基準」内で規定されているJIS規格及びこれと同等以上の規格・基準に従ってバリデーションすれば、滅菌の判定を線量だけで行うことができるので、処理後の無菌試験を行うことなく出荷することができる(ドシメトリックリリース)というメリットがあります。放射線滅菌バリデーション・規格等に関しましてご不明な点が御座いましたら、お気軽にお問い合わせください。

規格に準じたバリデーションのおおまかな流れ

1.最大許容線量の決定
放射線照射は照射線量に分布があるため、許容値が必要となります。滅菌線量ではなく、最大線量での劣化試験が求められており、経時劣化についてもデータが必要となります。可能であれば部品毎ではなく、包装を含む製品の状態での照射試験が望ましいとされています。
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2.対象製品及び製品のファミリー化
滅菌線量を設定するにあたり製品をファミリー(グループ)化し、その代表で滅菌線量を決定することが出来ます。
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3.無菌性保証水準の決定 (Sterility Assurance level:SAL)
滅菌後の製品に微生物等が存在する確率を示す指標です。医療機器の場合、SAL10-6以下を達成することで無菌性を保証しています。
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4.滅菌線量の設定方法を決定
実質的にISO11137-1(JIS T 0806-1)の方法1、方法2、VDmax25、VDmax15や、ISO/TS13004のVDmax17.5、20、22.5、27.5、30、32.5、35kGyから選択します。
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5.バイオバーデンの測定
滅菌前の製品に付着している菌数を測定します。
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6.検定線量の照射
所定の数のサンプルにバイオバーデンの結果から算出される検定線量を照射します。
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7.無菌性の試験
検定線量を照射したサンプルに菌が生存しているかを確認します。
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8.滅菌線量の確立
無菌性の試験で合格した場合、その検定線量に応じた滅菌線量を算出します。
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9.線量分布測定
製品を入れた照射用箱内の線量の分布を測定し、分布が滅菌線量以上であり最大許容線量以下であるかを確認します。


各項目の詳細に関しましてご不明な点があればお問い合わせください。

無菌性保証水準の決定(SALと生残曲線)

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滅菌しても材料に変化は起こらないか?

高分子材料は、分解型と架橋(橋かけ)型に大別されますが、その中間型のものもあって、その特性はまちまちです。一般に使われているポリエチレンやポリスチレンなど多くのプラスチックは比較的安定で、物性が変化することはありませんが、四フッ化エチレン(PTFE)などのフッ素樹脂は分解を起こしやすいので注意が必要です。また、透明ガラスを照射すると褐色に着色します。水晶や真珠なども線量によっては着色します。放射線に安定なポリエチレンでも高線量照射すると幾分黄色に着色したり、臭いが付いたりします。これらの物性の変化は樹脂のグレードや添加剤、線量の大きさによりますので、予備試験によってあらかじめ確認されることをお勧めします。各種材料へ滅菌線量を照射したときの安定性は以下の通りです。

材料 安定性(機械物性) 備考
金属類 γ線(Co60)や5MeVの電子線では変化なし
ガラス 低線量でも着色する 含有する不純物によって色が異なる
ポリエチレン 着色・着臭が目立つ場合がある
ポリプロピレン 滅菌線量では物性に問題ないが経時劣化に注意 経時で退色
ポリエチレンテレフタレート 滅菌線量には十分耐える 黄色~褐色に着色
ポリカーボネート 黄色~緑色に着色 経時で退色
ナイロン 比較的安定(高分子量は架橋する)
ポリスチレン 放射線に対して非常に安定
四フッ化エチレン(PTFE) × 低線量の照射でも分解が起こる
ポリメチルメタクリレート 着色が顕著に表れる
エチレン-酢酸ビニル共重合体 放射線に対して比較的安定(ポリ塩化ビニルの代替えとして有効) ポリ塩化ビニルの代替をして用いられる
ポリ塩化ビニル 脱塩酸により照射中及び保管中に着色
天然ゴム  100kGyから架橋が進む
シリコーンゴム ゴムの中では比較的放射線に対し弱いが 滅菌線量では問題無し
ブチルゴム 滅菌線量でも分解し、べたつく場合がある
ABS 比較的放射線に対し安定
セルロース 放射線によって分解される 滅菌線量では問題なし
ポリ酢酸ビニル 分解が優先的に起こるが滅菌線量では問題なし
ウレタンゴム 放射線に対して非常に安定
エチレンプロピレンゴム ウレタンゴムには劣るが、放射線に対して安定

※上記の安定性や備考については、樹脂のグレードや添加物によって変わります。

この他の材料につきましてもお調べ致しますので、お気軽にお問い合わせください。